それは、忘れもしない今から30年ほど前の大学時代のことです。
その日は、貧乏学生の中にあって、一人だけ車を所持していたヒゲS君宅において、マージャン大会が開かれておりました。
夜も更け、代謝が活発な若者のことですから、当然腹が減ります。誰からともなく、「何か食べたいね」という声が上がります。
ふと、ヒゲS君の顔をのぞくと、一瞬その表情に影がよぎったのです。問いただそうとすると、彼が指さすその先には、何の変哲もない電気釜が・・・。
「電気釜がどうかしたのか?」
「いや・・・」
「どうしたんだ?」
「実は、ご飯炊いたのを忘れてしまって、気が付いたのが2週間後。それから、なかなか蓋を開ける勇気がなくて、ついに半年」
「・・・・・」
誰しもが凍り付き、そして、誰一人その蓋を開ける者はいませんでした。
その後間もなくして、蓋を開けられることなく、その電気釜は捨てられたとのこと。
悲運の電気釜、悲運のご飯に合掌。
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